ぼくの名前はまくびーくん。
ぼくの仕事は世界中のみんなを幸せにすること。
みんなの笑顔を見ることがやめられないし止まらないんだよ。
妖精の姿だと音速で飛んでるから、人間のみんなと触れ合えなかったんだ。
でもゆりこおねえさんに出会って体をもらってから、この世界でみんなと実際に触れ合うことができるようになったんだ。
ゆりこおねえさんはコンタクトレンズを着けたまま眼鏡をかけていたり、エレベーターのボタンを押さずに待っていたり、たまに抜けてる行動をするんだ。
そういうときは、ツッコミを入れたくなっちゃうんだよね。
「どうやってぼくはこの世界で生まれたの?」
「それはね……」
そこで、ゆりこおねえさんがアルバムを出してきてくれてお話してくれたんだ。
「立体になる前にまずはイラストを元に、パーツの位置の修正・調整。細かいところまで直してもらったのよ」
「これがぼくの元になったんだね! 次はどうなったの?」
「次は表面の生地を決めたのよ」
「今と色が少し違うね!」
「そうそう! 工房の人と相談して最終的に変更したの」
「その後はどうなったの?」
「次は工房で立体にする作業よ。実際に工房へ行ってきたのよ」
「ここがまくびーくんを作る工房よ」
「かなり広いね!」
「ここでたくさんのキャラクターたちを日夜生み出しているんだって。工房の職人さんってすごいわよね。置いてあるキャラクターたちはみんな可愛くて、ついウインクしちゃったわ」
(……なんでそこでウインク?)
「まくびーくんが! つい叫んで駆け寄っちゃったわ」
「興奮しないで」
「ただ、ぽつんと胴体と頭が置いてある光景がなんとも忘れられないの」
「シュールだね!」
「わ! まだ白いね!」
「思ってたより大きくて存在感があって、『実際にまくびーくんがこの世界にいる!』って感動したわ。なんか違和感があったけど」
「触覚が無いことに気づいて!」
「後ろはこんな感じ。丸みのあるフォルムがポイントよ! 頭の後ろには、なんと暑いときに便利なファンが付いてるの。最先端の技術を使ってるなんて感動しちゃった!」
「そこまででもないと思うけどね!」
「真っ白な芯材は発泡スチロールなの。ここから、生地を上から着けていく作業よ。この段階で、着心地やパーツの位置を調整したら次の工程へ進むの」
「どれくらいかかったの?」
「2週間くらいかかったわ。すごく待ち遠しかった」
「アトリエを見渡してみると…カラフルな生地がいっぱい。つい全部広げてみたくなるから、困ったわ」
「それはやめて」
「この作業台は大きくない?」
「大きな着ぐるみを作るから、生地を縫うのにこれくらいの大きさが必要なの」
「これは何?」
「まくびーくんのこれまでの試作を見せてもらったわ。何度も何度も試してもらったのよ」
「いっぱい時間がかかったんだね」
「こっちは大きなプリンターよ。市販にない色や柄をプリントするために使うんだって。手のオレンジ色はこれを使って作った特製の生地なのよ」
「すごくこだわってるんだね! 触覚もここで作ってもらったの?」
「そうよ。原型の仕上がりはこんな感じになったの」
「だいぶもう出来上がってきたでしょ!」
「いよいよ今のぼくに近づいてきたよ!」
「完成前に修正をお願いして少々変更してもらったわ」
「ほら、こんな感じ」
「ん? 前とそんなに変わってない、なんて一瞬思っちゃったわ」
「……よく見たら違うよ。チークや触覚の角度が違うね!」
「完成へ向けて細かく直してもらって……ついに完成!
こうしてまくびーくんが誕生したの。最後まで細かいところまですごくこだわって作ってもらったのよ
」
「わー! こうやってぼくが生まれたんだね! いっぱい動き回れて楽しいよ!」
ゆりこおねえさんは説明が終わると、アルバムをパタンと閉じた。
「すごいいっぱい写真を撮ってるね! ゆりこおねえさんありがとう!」
次はゆりこおねえさんと散歩に行ってみんなと会えるのがすごく楽しみだよ!
とってもとっても楽しみ!!
■まくさんぽシリーズ一覧
第1回「着ぐるみ工場を見学しよう!」>>
第2回「下北沢で舞台を観よう!」>>